【イベントレポート公開】日本の気候変動を感じるアート展HELP展 〜30年後には消えてしまうかもしれない In AOMORI〜

2024.10.28

来場者数は460人以上と大盛況のうちに閉会
昨年からスタートしたHELP展の総来場者数は、1500人に迫る


レポート概要

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は、10月4日(金)、5日(土)、6日(日)に 青森県・弘前れんが倉庫美術館 市民ギャラリー・スタジオで開催された、日本における気候変動の影響をアートを通じて感じる展覧会「HELP展 〜30年後には消えてしまうかもしれない In AOMORI〜」のイベントレポートを公開。
3日間という短い会期にも関わらず、計465人が来場し、過去最多ペースでの動員となった。さらに「未来への伝言ダイヤル」と題した議員や行政など政策を扱う人々にメッセージを送ることができるコンテンツや「青森の暮らしと気候変動」と題したトークイベントへも多くの方が参加し、青森の地でも気候変動への関心の高さが伺えた。
また、東京約750人・滋賀約230人・青森約460人と、昨年からの総来場者数は約1440人になり、日本各地で盛り上がりをみせている。 

「HELP展 〜30年後には消えてしまうかもしれない〜 In SHIGA」とは?

東京と滋賀に続き、 青森県・弘前れんが倉庫美術館 市民ギャラリー・スタジオで開催された、日本における気候変動の影響をアートを通じて感じる展覧会。

気候変動の影響もあり30年後に日本から失われてしまうことが予想される生物や文化の中からいくつかのテーマをピックアップし、ぬいぐるみ作家・片岡メリヤス氏、八劔神社宮司・宮坂清氏、料理研究家・土井善晴氏らを含む多様な作家、文化人たちと協力し、日本に迫る気候危機を五感で「感じられる」作品を展示した。
HELP展 In AOMORIでは、世界シェアNo.1を誇るりんご「ふじ」発祥の地、藤崎町が主催する「アップルクリエイティブアワード」と協賛し、同アワード内で「HELP賞」を特別に設置。HELP展会期中に実施されたトークイベントは、HELP賞応募に向けた学習の機会ともなった。
応募期間は2024年11月15日(金)まで。HELP賞(1名)受賞者には「賞金5万円+りんご1箱」が贈られる。

主催:グリーンピース・ジャパン
企画:クリエイティブユニットHAKUA(https://ha9a.com/
公式サイト:https://help-ex.jp/
公式インスタグラムアカウント:https://www.instagram.com/help_gpj/


© HAKUA / Greenpeace

HELP展 In AOMORI オリジナル企画
「アップルクリエイティブアワード」に協賛し「HELP賞」の特別設置(24年11月5日締切)、「青森の暮らしと気候変動」トークイベント

HELP展 In AOMORIでは、2つのオリジナルプロジェクトも展開され、3日間の展示だけに止まらない広がりを見せている。

① 「アップルクリエイティブアワード」に協賛し「HELP賞」の特別設置

日本で唯一リンゴ栽培を専門的に学ぶ「りんご科」のあった学校をリノベーションし、りんごで遊べる施設として青森県藤崎町が開業した「リンゴカ・ミュージアム」。
開業を記念して2023年から「アップルクリエイティブアワード」を設け、リンゴカ・ミュージアムに展示する作品を募集している。2年目となる今年は、HELP展 In AOMORIと連携し、「HELP賞」を特別に設置。りんごの思い出や五感を通して気候変動と関連した作品も募集中。応募期間は2024年11月15日(金)まで。

【アワード概要】

「HELP賞」審査基準

アップルクリエイティブアワード2024の「りんごを一番に届けたい想い」と、HELP展の「気候変動とアート」という二つのコンセプトに沿った作品を募集しています。
「地球沸騰化」に伴う気候変動が進行する中、青森県ではりんごをはじめ、さまざまな場面でその影響が顕在化しています。気候変動について楽しく関心をもってもらい、身近な出来事として捉えてもらう作品をお待ちしています。(作品を通じて気候変動について行動を促すような動機づけがされていると尚可)。上記に加え、「独創性があるか」「技術表現力があるか」の3点をもとに総合的に審査します。

HELP賞について
HELP賞(1名)
賞金5万円+りんご1箱(※表彰式の出席旅費・交通費は自己負担)

対象(作品応募資格)・応募作品
・チームで応募、個人応募どちらも可能です。
・年齢制限はございません。
・コンセプトに合わせた作品制作をお願いします。
・プロダクト、工芸、絵、彫刻、詩、写真、映像等、形態に制限はございません。

応募方法
メール、またはGoogleフォームからご応募いただけます。詳細は、アップルクリエイティブアワードの公式サイトをご確認ください。

応募期間
2024 年 9 月 18 日(水)~2024 年 11 月 15 日(金)
その他、詳細はアップルクリエイティブアワードの公式サイトをご確認ください。
公式サイト:https://ringoca-award.com/

 

② 「青森の暮らしと気候変動」トークイベント

10月6日(日)に「青森の暮らしと気候変動」をテーマにトークイベントを開催。
気候変動の専門家である地球環境戦略研究機関(IGES)上席研究員・藤野純一氏による解説の後、青森在住のりんご農家「トキあっぷる社」代表・土岐彰寿氏、エフエム青森アナウンサー・中里玲奈氏から青森で身近に起こる自然や暮らしの変化が語られた。

さらに、気候変動を食い止めるために私たちができることは何か?変化をどう好機に変えていくか?といった議論が登壇者同士で活発に行われ、会場は盛り上がりを見せた。
また、アーティスト・HELP展クリエイティブディレクター・宮園夕加、中里 氏からは難しく語られがちな環境問題を、どう伝えていくかなど、「アップルクリエイティブアワード HELP賞」の作品作りへのヒントも提示された。


© HAKUA / Greenpeace

展覧会リユース、擬似募金体験など参加型企画も大盛況

東京と滋賀での開催に続き、気候変動をより自分ごととして考えてもらえる、さまざまな参加企画も実施。多くの来場者が参加した。

① 展示品や会場造作の持ち帰りで「展覧会リユースの社会実験」

本巡回展では、現地農家の方からお借りしたりんご箱を展示資材として使うなど、使い捨て資材を極力減らして実施。また、告知物に関しても新聞紙を活用した。製造において古紙を使用し、さらに包装や緩衝材としても再活用できるなど、極力展覧会が終わってすぐに捨てられるものにならない宣伝ツールとして制作した。実際に持ち帰って紙バッグに再利用する方も現れた。
その上で、展示品を含む会場造作を持ち帰りできる「リユースできる展覧会」を東京・滋賀に続いて実施した。

持ち帰り希望の方にはリユースのアイデアをチケットに記入いただき、70のアイデアが集まった。
また、東京・滋賀・青森の合計では、202のアイデアが集まった。


© HAKUA / Greenpeace

 

② 助けたいと思ったものへの「擬似募金体験」

本巡回展でも受付でお渡しするオリジナルコインを持って展示を鑑賞いただき、最後に助けたいと思ったものの募金箱へコインを投入する企画を実施。
募金したものから、「ペンプロッター(注2)」によりその場で執筆・出力するお礼の手紙を受け取ることができる仕掛けが好評を博し、152人の方が擬似募金体験に参加した。愛嬌のある文字と内容で「うなぎ」や「ジュゴン」、「りんご」などから自分の名前宛で届く手紙が書き始められると、驚きの歓声があがり、東京・滋賀展に続き青森でも、目玉的な企画となった。
(注2)ペンを自動で動かし、文字や図形を描く製図用出力機器。


© HAKUA / Greenpeace

 

③ 青森の自然を守れ「未来への伝言ダイヤル」

りんごの高温障害や大雨による災害など、気候変動の影響が顕著に見えはじめている青森。
HELP展 In AOMORIにも行政関係者が複数来場されるなど、政策を担う人々からも高い関心が寄せられた。

そんな県民と政策を担う人々とを繋ぐためのツールとして、未来への伝言ダイヤルと題した電話機を用意し、来場者は未来に豊かで美しい青森の自然や風土を残すためにやって欲しいことを、留守番電話のように自分の声で吹き込むことができた。集まった声は、グリーンピース・ジャパンによって議員や行政など政策を扱う人々へと届けられる。

青森巡回展では20件以上の声が集まり、人々の想いの強さが伺えた。


© HAKUA / Greenpeace

集まった声(一部抜粋)
・再生可能エネルギーの電力に切り替えて、子供、孫たちに美しい地球を残すためにお願いします。
・いつまでもこのきれいな青森の海が残って、海の幸・ホタテ・お魚などがいつまでもおいしく食べられるようになればいいなと思います。
・青森県は一次産業の方が多いですし、暑さにも慣れてないので、もっとみんなが関心を持っていけるように、そういったイベントもどんどんやってほしいです。一時的な補助ではなくて、抜本の改革として気候変動対策を進めていってほしいなと思っています。よろしくお願いします。
・HELP展の寿司展示で海の生物のことを取り扱っていたが、常日頃海の生き物のことを考えています。特に青森県はホタテが盛んで、近年ホタテの養殖がうまくいかないような海水温の上昇もみられます。毎日暑いし、海水温のことがいつも取りざたされていますので、その問題を何とかしていってほしいなと思います。青森県のホタテだけじゃなくて、海洋生物、ひいては人間にも大きな影響を及ぼすことだと思うので、海水温、つまり温暖化を止めるのをなんとかしてほしい。

主催者コメント

HELP展 クリエイティブ・ディレクター、宮園夕加
ずっと行ってみたいと願ってきた弘前れんが倉庫美術館でHELP展を開催でき、想像を超える多くのお客様にお越しいただけたことを心の底から嬉しく思います。「ものを作ること」が気候変動を止める直接的な手段になるには課題が多く難しいということを長年自覚し痛感し続けてきましたが、問題や課題を「もの」に乗せた時、よりたくさんの方に伝わり波及することをこのHELP展で経験しました。アップルクリエイティブアワードのHELP賞に出展される作品にもその力が加わること確信していますし、私がHELP展を喜びと楽しさと幸せと共に築けてきたように、出品者の方が制作を楽しんでいただけることを願っています。

グリーンピース・ジャパン プロジェクト・マネジャー、高田久代
秋の初めのりんごの季節に、りんごとアートで名を馳せる青森県でHELP展を開催でき、多くの方にご来場いただけたことに、大きな喜びを感じています。実現に力を貸してくださった皆様に心より御礼を申し上げます。気候変動・温暖化は自然の巡りのなかで営まれる農業や漁業、林業といった一次産業にまず影響を及ぼします。加えて、寒冷地ではそうでない地域よりも気温上昇が高くなる傾向があり、これまでの日常との差が際立ってきます。これは青森県が、気候変動という大きな変化を、青森県のための大きな転機にする機会の中にあることを意味します。気候変動対策は、2030年までの残り数年間での取り組みが非常に重要だとされており、気候変動の影響を自分の日常とのつながりから感じて効果的な行動を始める市民が広がり、連携していくことが欠かせません。グリーンピースでは、今後もそのような機会と連携の創出と政策への働きかけを続けつつ、青森県からの取り組みを応援していきます。

 

わたしたちに今日できること
また、一人ひとりの力は、決して小さくありません。
HELP展を通して、何かを感じていただけた方は、ぜひ自分なりにできるアクションを起こしてみてください。
グリーンピース・ジャパンでは、そんな皆さまの想いや行動がビジネスや政治に届くためのサポートを行っています。たとえば以下のアクションで自分が一番楽しめそうな行動から始めてみるのが、おすすめです。