来場者は東京展を上回るペースの230名以上好評につき10月4日(金)〜6日(日)に青森県 弘前れんが倉庫美術館にて次なる巡回展の開催が決定
レポート概要
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は、8月10日(土)、11日(日)に開催された、日本における気候変動の影響をアートを通じて感じる展覧会「HELP展 〜30年後には消えてしまうかもしれない In SHIGA〜」のイベントレポートを公開。
会期中の来場者数は230人以上にのぼり、東京での開催を上回るペースとなった。さらに「未来への伝言ダイヤル」と題した議員や行政など政策を扱う人々にメッセージを送ることができるコンテンツにも50人以上の参加があった。7月に発表された滋賀県民の気候変動への意識調査の結果にも見られるように、琵琶湖を有する滋賀県において気候変動への関心の高さを伺うことができた。
滋賀巡回展での反響を受け、10月4日(金)〜6日(日)に青森県「弘前れんが倉庫美術館」にて次なる巡回展の開催も決定、詳細情報は9月中旬に公開予定。
「HELP展 〜30年後には消えてしまうかもしれない〜 In SHIGA」とは?
日本における気候変動の影響をアートを通じて感じる展覧会。
気候変動の影響もあり30年後に日本から失われてしまうことが予想される生物や文化の中からいくつかのテーマをピックアップし、ぬいぐるみ作家・片岡メリヤス氏、八劔神社宮司・宮坂清氏、料理研究家・土井善晴氏らを含む多様な作家、文化人たちと協力し、日本に迫る気候危機を五感で「感じられる」作品を展示する。
HELP展 In SHIGAでは、「琵琶湖と気候変動」をテーマにトークイベントも開催。
さらに、全国的にも活動が盛んな滋賀県の高校新聞部と気候変動について共に学び、新聞記事化していくプロジェクトも並走中。トークイベントでは高校生から登壇者への取材活動も活発に行われた。
主催:グリーンピース・ジャパン
企画:クリエイティブユニットHAKUA(https://ha9a.com/)
公式サイト:https://help-ex.jp/
公式インスタグラムアカウント:https://www.instagram.com/help_gpj/
© HAKUA / Greenpeace
HELP展 In SHIGA オリジナル企画
高校生新聞部コラボレーション、「琵琶湖と気候変動」トークイベント
HELP展 In SHIGAでは、2つのオリジナルプロジェクトも展開され、2日間の展示だけに止まらない広がりを見せている。
① 高校生新聞部コラボレーション
未来を担う若者と一緒に気候変動について考えるべく、例年、全国高校総合文化祭で最優秀賞を受賞するなど、目覚ましい活躍を続ける滋賀県の高校新聞部とコラボレーション企画を実施。
虎姫高校、東大津高校、八幡工業高校の3校と連携し、「琵琶湖と気候変動」をテーマにした新聞記事を制作している。
展覧会に先駆け、7月20日(土)には京都大学生態学研究センター長 中野 伸一氏、ジャーナリスト・京都新聞 記者 松村 和彦氏をお招きしてオリエンテーションイベントを開催し、知識を深めた。HELP展 In SHIGAでも取材活動を行い新聞記事を制作中。高校生新聞部によるコラボ記事は秋頃に公開予定。
© HAKUA / Greenpeace
オリエンテーションの様子やオリエンテーションの内容をまとめた事前取材記事も展覧会で展示された。
② 「琵琶湖と気候変動」トークイベント
8月11日(日)には「琵琶湖と気候変動」をテーマに、トークイベントも開催。京都大学生態学研究センター長・中野 伸一氏、琵琶湖の伝統漁法えり漁漁師・駒井 健也氏、ラオス料理人・小松 聖児氏、立命館大学学生・尾下望氏が登壇した。1000年(平安時代)以上前から続く琵琶湖の伝統漁法「えり漁」など、滋賀県の人々が琵琶湖の恵みを大切に使い、様々な伝統や文化を発展させてきた話など、多彩な視点で琵琶湖の歴史や現状、そして気候変動の影響について語った。また、質問も多くあがり、来場者と登壇者が共に琵琶湖の未来を考える場となった。
トークイベント終了後には、高校生新聞部による登壇者への取材も活発に行われ、記事制作に活かされる。
© HAKUA / Greenpeace
展覧会リユース、擬似募金体験など参加型企画も大盛況
東京開催に続き、気候変動をより自分ごととして考えていただけるよう、さまざまな参加企画も実施。多くの来場者が参加した。
① 展示品や会場造作の持ち帰りで「展覧会リユースの社会実験」
本巡回展では、循環型森林経営として、木を植えて育て、伐採してまた植えるという持続可能な森づくりを続 けてきた北海道下川町の木材を使ったモクタンカン(注1)というプロダクトをリースし、使い捨て資材を極力減らして実施。その上で、展示品を含む会場造作を持ち帰りできる「リユースできる展覧会」を東京に続き実践した。
持ち帰り希望の方にはリユースのアイデアをチケットに記入いただき、31のアイデアが集まった。
青森の巡回展でも作品はチケットとセットで展示され、青森巡回展終了後に当選者への連絡が行われる。
(注1)仮設足場の資材として広く普及している“単管システム”の金属パイプを、国産材のヒノキから削り出した丸棒へと置き換えたツール。(公式サイト:http://moktankan.com/)
© HAKUA / Greenpeace
② 助けたいと思ったものへの「擬似募金体験」
本巡回展でも受付でお渡しするオリジナルコインを持って展示を鑑賞いただき、最後に助けたいと思ったものの募金箱へコインを投入する企画を実施。
募金したものから、「ペンプロッター(注2)」によりその場で執筆・出力するお礼の手紙を受け取ることができる仕掛けが好評を博し、152人の方が擬似募金体験に参加した。愛嬌のある文字と内容で「うなぎ」や「ジュゴン」、「琵琶湖」などから自分の名前宛で届く手紙が書き始められると、驚きの歓声があがり、東京展に続き滋賀でも、目玉的な企画となった。
(注2)ペンを自動で動かし、文字や図形を描く製図用出力機器。
© HAKUA / Greenpeace
③ 滋賀の自然を守れ「未来への伝言ダイヤル」
琵琶湖を有し、県民だけでなく議員や行政も環境への意識が高い環境先進県、滋賀県。
HELP展 In SHIGAに対しても滋賀県から後援を得られたり、滋賀選出の国会議員にご案内を出したところ祝電をいただくなど、非常に高い関心が寄せられた。
そんな県民と政策を担う人々とを繋ぐためのツールとして、未来への伝言ダイヤルと題した電話機を用意した。
来場者は未来に豊かで美しい琵琶湖の姿、滋賀県の自然を残すためにやって欲しいことを、留守番電話のように自分の声で吹き込むことが可能。集まった声は、グリーンピース・ジャパンによって議員や行政など政策を扱う人々へと届けられる。
滋賀巡回展の2日間で50件以上の声が集まり、琵琶湖や地球環境を守りたい人々の想いの強さが伺えた。
© HAKUA / Greenpeace
集まった声(一部抜粋)
・地球環境がすごく悪化するので、政治に関わっている人はもっと多くの人にこのことを知ってもらうための政策をしてほしいです。そのためにいろんな人から意見を聞いて、特に若者の意見を取り入れて政治をしていってほしいと思っています。
・滋賀県に住んで20年ぐらいたちますが琵琶湖の綺麗さに毎日癒されています。これからも綺麗な琵琶湖であるように願ってます。
・琵琶湖がいつまでも美しくて琵琶湖固有の魚などもなくならないように、琵琶湖の環境を守ってほしいと思います。あわせて伊吹山が最近土石流とかでなかなか昔の姿でないので、伊吹山の保全もぜひ図っていただきたいと思いますのでお願いします。
・長浜市に住んでいる高校生です。他県の人から見ると、滋賀県=琵琶湖というイメージだとよく言われます。そんな琵琶湖も環境問題を多く抱えているので、これからの環境が不安です。これからも他県に誇れるような琵琶湖であり続けられるような政策をしていただきたいと思います。
主催者コメント
HELP展 クリエイティブ・ディレクター、宮園夕加
大学時代から「作品を作ること」と「捨てること」の関係性を通じて環境問題に興味を持ち、社会人になってからはサスティナブル関連の商品開発を担当したり、自分なりに勉強をしてきました。その中で「もうどうやっても気候変動は免れないし、もうお手上げだ〜!」と諦めていた時期があります。落ち込んでいた頃にグリーンピースに出会い、その活動と歴史に励まされました。そしてHAKUAとしてHELP展を開催できたことで、まだまだ自分にできることがあることを理解し、この大きな気候変動という問題に人と取り組む楽しさ、安心感、充足感を経験しました。HELP展 In SHIGAに想像以上に多くの来場者の方にお越し頂けたことで、この喜びを共有できたことを心から嬉しく思います。
グリーンピース・ジャパン プロジェクト・マネジャー、高田久代
環境先進県である滋賀県でHELP展を開催でき、老若男女を問わず多くの方にご来場いただけたことに、大きな喜びを感じています。実現に力を貸してくださった皆様に心より御礼を申し上げます。気候変動は実際に見ることも触れることもできませんが、日常に現れる影響を自分の大事なものに引き寄せて考えることで、思い出や五感を通して感じられるのではないでしょうか。気候変動対策は、2030年までの残り数年間での取り組みが非常に重要だとされています。より野心的な政策にするよう働きかけるためには、気候変動の影響を自分の日常との繋がりから感じ、効果的な行動を始める市民が広がり、繋がっていくことが欠かせません。グリーンピースでは、今後もそのような機会と連携の創出と政策への働きかけを続けつつ、滋賀県からの取り組みを応援していきます。